1) 綿繊維 |
最も代表的な種子毛繊維である。産地・品種によって長さ、太さ、色彩、光沢などに差がある。一般に在来種(野生種)は太くて短く、改良種(米綿種)は細くて長い。
主成分はセルローズで親水性のある水酸基が多いので吸湿性、吸水性に富む。セルローズ以外の成分は表面部分にあるので採取の新しい綿には撥水性がある。酸には弱いが、アルカリに強いので弱アルカリ性の洗剤に対しての耐久力があり、性能的にも経済的にもよく、使用範囲が広い。 |
表6 綿 繊 維
成 分 |
含有割合(%) |
セルローズ |
94.0 |
たんばく質 |
1.3 |
灰 分 |
1.2 |
ペ ク チ ン |
0.9 |
有 機 酸 |
0.8 |
ろう・油脂 |
0.6 |
糖 類 |
0.3 |
色 素 |
微量 |
そ の 他 |
0.9 |
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セルローズの化学構造
省略
表7 綿繊維の長さと太さ〔J. Text. Inst.,42. S71(1961)〕
綿 繊 維 |
長 さ(?) |
太 さ(μ) |
平 均 |
最 大 |
インド綿 |
10〜20 |
20〜36 |
14.5〜22 |
米 綿 |
16〜30 |
24〜48 |
13.5〜17 |
エジプト綿 |
20〜32 |
36〜52 |
12〜14.5 |
海 島 綿 |
28〜26 |
50〜64 |
11.5〜13 |
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綿繊維の形態
最外層部の表皮はワックス、ペクチン、脂肪からなっている。
第1次層は主にセルローズで、他にペクチン、蛋白質などからなる。
第2次層(s1〜s3)は綿繊維の主成分で約95%ほどを占めている。この部
は薄い層をしたラメラからなっている。
ラメラはマイクロフィブル(100本ほどのセルロース分子)(5〜6?)からできている。
これらは20〜30°のらせん状構造をしている。
綿繊維の断面
綿繊維の断面は図のように圧しつぶされたようになっていて、図のCとNの部分がいたみ易い。 |
2) 麻
天然繊維中最大の引張強度があり、綿のように湿ると強くなる。吸湿・吸水性がよい。セルローズが主成分であるが、綿に比べて分子の配列がよい。比較的に熱伝 導率が大きく、吸排湿が速いので清涼感がある。 |
3) 羊毛
家畜羊の歴史は長く、改良が重ねられて種類も多い。品種よってまた産地によっても羊毛の太さ、長さ、クリンプ、色彩、光沢などに差がある。
軟毛のウールと粗毛のヘァーがある。
羊毛の構造は表皮(キューテクル)と皮質(コルテックス)があり、表皮の大部分は鱗片(スケール)で覆われている。この鱗片は、根本から先端に向って逆方向に積み重なっている。表皮の外側は疎水性のあるエピーキューテクルの層があり、この層は粒子の小さい湿気は通すが粒子の大きい水は通さないので、吸湿性は大きいが撥水性がある。
羊毛のコルテックスは吸水性の多いオルソコルテクスと、吸水性の少ないパラコルテックスとの2相構造なので特有のちぢれを作っている。
羊毛は寝具に使用されている繊維の中では最も吸湿性が高いが、これは主成分のケラチンが関係している。
ケラチンの構成アミノ酸の中にシスチンがみられる。シスチンは次式のような構造をしたアミノ酸で、ケラチン分子にシスチン結合と呼ばれる橋かけ結合を形勢する。
このような橋かけ結合は羊毛製品がしわになり難い役割を果たしており、シスチン結合の還元剤で切断され、酸化剤で再生されることはシロセット加工(羊毛製品に折り目をつける)にも利用されている。
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表8 羊毛ケラチンのアミノ酸組成(モル%)
成 分 |
モル% |
シスチン |
11.59 |
グルタミン酸 |
11.55 |
セリン |
11.41 |
グリシン |
10.12 |
ロイシン・イソロイシン |
10.04 |
プロリン |
6.89 |
アルギニン |
6.88 |
トレオニン |
6.25 |
アスパラギン酸 |
5.80 |
アラニン |
5.40 |
バリン |
4.76 |
チロシン |
2.99 |
フェニルアラニン |
2.64 |
リシン |
2.11 |
トリプトファン |
1.02 |
メチオニン |
0.60 |
ヒスチジン |
0.52 |
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100モル中に含まれるアミノ酸のモル数
(被服材料学、森、中島) |
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4)
絹
絹織物は紀元前2000年前に中国で始められた。更にこの絹織物はいわゆるシルクロードを経て国外へ輸出され、日本へは3世紀ころに、アジア諸国、ヨーロッパなどには4〜5世紀ころに技術が伝わったといわれている。日本では明治末〜昭和15年ころの生産が多くて世界1位であった。
絹は天然繊維中最も長い繊維で蚕(鱗翅目カイコの幼虫)のまゆから作られる。蚕の体内には2本の絹糸腺があって各々の絹糸腺には後部絹糸腺と中部絹糸腺、前部絹糸腺がある。まず後部絹糸腺から分泌された蛋白質のフィブロインは中部絹糸腺に送られここで蛋白質のセリシンによって覆われ、次いで前部絹糸腺で2本の絹糸腺から出たフィブロインは周囲のセリシンによって接着して1本の繊維となって吐糸口から出されてまゆを作る。
蛋白質フイブロンを同じく蛋白質であるセリシンで接着させた構造で羊毛に次いで吸湿性がある。
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表9 絹フィブロンのアミノ酸の組成
(モル%)
成 分 |
モル% |
グルタミン酸 |
0.93 |
セリン |
11.91 |
グリシン |
44.46 |
ロイシン |
0.49 |
イソロイシン |
0.54 |
プロリン |
0.40 |
アルギニン |
0.44 |
トレオニン |
0.98 |
アスパラギン酸 |
1.38 |
アラニン |
30.24 |
バリン |
2.09 |
チロシン |
4.88 |
フェニルアラニン |
0.63 |
リシン |
0.30 |
トリプトファン |
0.20 |
ヒスチジン |
0.15 |
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100モル中に含まれるアミノ酸のモル数
(森、中島) |
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5) レーヨン
木材パルプやリンター(綿の実についている短い繊維)など原料としたセルローズ系の再生繊維でレーヨン、捲縮レーヨン、ポリノジック等がある。吸湿、吸水性がよく、ぬれると強度が低下する。 |
6) キュブラ
銅アンモン法によって作られた再生セルローズで生産量は少ない。吸湿性はよい。 |
7) アセテート
木材パルプ・綿実のリンターパルプを原料としたセルローズ繊維で、セルローズのOH基をアセチル基と置換したセルローズアセテートを繊維としたもの。絹様の風味があリ、吸湿性がある。 |
8) 合成繊維
沢山の合成繊維があるが、枕の側材としての使用は少ない。
1)ポリエステル
エステル結合による合成高分子からの繊維はポリエステルと称される。現在広く利用されているのはポリエチレンテレフタレートからのものである。ポリエチレンテレフタレートは次式によって合成される。
省略
ポリエチレンテレフタレートは融点がナイロン6より高いが(軟化点238〜240℃,融点255〜260℃),ナイロン同様溶融紡糸で繊維とされる。化学繊維の中ではヤング率は大きく絹や綿と同程度である。吸湿性、吸水性が少なく水分率は0.4〜0.5%、ナイロン同様に丈夫な繊維である。
2)ナイロン
アミド結合(−CONH−)を持つ高分子化合物をポリアミドといい、この中の糸状の合成ポリアミドをナイロンと呼ぶ。日本やヨーロッパではナイロン6がアメリカではナイロン66が主である。分子中にアミド基とカルボキシル基をもっているので合成繊維の中では親水性は多い方である。
ナイロンはヤング率は小さいが伸長率の弾性度が大きい。伸縮性の必要とする繊維製品に適している。比重1.14で軽く薬品、かびに強い。合成繊維中では吸湿のある方ではあるが、静電気を帯びやすい。
ナイロン66繊維は溶融紡糸法で作られる。軟化点230〜235℃、融点250〜260℃である。
ナイロン6繊維は溶融紡糸法で作られる。軟化点180℃、融点215〜220・である
3)アクリル繊維とアクリル系繊維
アクリロニトリル単位を主成分とした高分子からの繊維をアクリル繊維、アクリロニトリル単位が重量比で40〜50%に副成分を加えたものをアクリル系繊維と呼んでいる。副成分には塩化ビニルや塩化ビリニデンなどが使われる。
アクリル繊維は羊毛に似た風合いがあるが吸湿性に乏しい。ナイロンと同程度に軽い(比重1.14〜1.17)。
アクリロニトル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、アクリル系繊維は塩化ビニルや塩化ビニデリンがあって難燃性がある。
4)ポリプロピレン繊維
プロピレンを重合させて作られる。比重は0.91で軽い。
5)ビニロン
ポリビニルアルコール(PVA)を熱水溶解して湿式紡糸をして、できた水溶性の繊維に熱処理とホルマリン処理(アセタール化)して耐水性のある繊維とする。合成繊維中では吸湿性が大である。
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