93.押し入れの湿気に注意 |
94.ダニと対策 ダニは家の外にも内にもたくさんいるし種類も多い。寝具につくダニの代表的なものはヒョウダニ(チリダニ科ヤケヒョウダニ・コナヨウダニなど)で80%以上を占め、次いでナミホコリダニ(ホコリダニ科)その他のダニ類がすこしずつ見られる。 ヒョウダニは人体からでたフケやアカを、ホコリダニはふとんについたカビ類を食べている。数は少ないが、ツメダニもいてヒョウダニを捕食している。 ダニの好適条件は温度20〜30℃、湿度60〜80%、食べ物があることである。好適条件下では、チリダニの卵は25日ほどで成虫になるので繁殖も早い。チリダニの虫体・糞ともアレルゲンとなる。特に糞は乾燥すると10分の1、20分の1ほどになって1〜2マイクロ?になるので呼吸器に入り易くなるので影響は大きい。吸い込んでから数10分〜数時間でアレルギーを起し、発症すると治り難いことがある。ツメダニに刺傷されると5〜8時間後に皮疹ができ、かゆみが10時間ほども続くことがある。一過性なので多くは経過時間後は自然に治る。 対策はダニの生育し易い条件を除くことである。つまり、体を清潔にしてシーツ、カバー、寝巻きなどの洗濯をよくしてダニの食べ物となるフケ、アカなどをつけないこと、押し入れもよく乾燥してカビなどの発生がないこと、ふとんの乾燥を励行してダニの生息し難い温度、湿度にすることである。起床した時のふとんの中は温度28〜30℃、湿度70〜80%ほどになっていることが多いので、1、2時間ほど室内に置いて湿度を減らしてから押し入れに収納することは、ふとんと押し入れの中の湿度を高めない。ダニ類は50℃20分ほどで死滅するので、乾燥加熱は効果的である。 日光乾燥は最も手近で効果もよい。直射日光はダニの死滅を早める。乾燥後軽くふとんをたたくとダニや糞を飛散させるし、ホーキや掃除機を使うとさらによい。夏日にふとんの上に黒い布をかけると表面温度が5〜8℃ほど高くなるし、水分も3〜5%ほどまで下げられるのでふとん表面にあるダニのほとんどが退治できる。しかし、ダニは中わたに多いので、長時間毎日続けることである。 ふとん乾燥機を使用する場合は、敷ぶとんと掛ぶとんの間ばかりでなく、敷ぶとんとタタミ、床面との間にも作用させるとよい。一般に敷ぶとんの方が掛ふとんよりも湿度もダニも多いからである。 ふとんばかりでなく、室内、押し入れ、床面の掃除も励行しなければダニ退治の効果は上がらない。 |
95.ふとんの日光乾燥 睡眠中に体から発生した水分はふとんに吸収されてから透湿によって空中に放散されるが、なお、ふとんの中に水分は残っている。できるだけ乾燥した方がよいが、ふとんの種類によってその方法にも多少の差がある。 ○乾燥要領 時間帯は午前10時〜午後3時ごろが空気も乾燥しているのでよい。降雨の翌日は晴天であっても空気中の湿度が高いので乾燥には適当でない。 色・柄などの日光による変退色や側布の劣化を防ぐために、薄い布やシーツ、カバーなどをかけるとよい。シーツやカバー程度では放湿量に大差はない。黒い布をかけると日光からの熱の吸収がよくなるので乾燥効果がよくなる。 乾燥後はふとんの表面にあるほこりをホーキではくか、掃除器でとる程度でよい。叩いても布地を損ねるだけで、中わたがほぐれることの期待はできない。 平常使うことのない客用ふとんや夏・冬の季節用のふとん類は、押し入れでは放湿の機会がないので2か月に一度くらいは乾燥したほうがよい。乾燥後必要以上に熱くなった時は熱がとれてから折りたたんで収納する。 ○綿わたふとん 綿わたふとんには厚いものが多い。特に敷ぶとんは厚い上に就寝中に吸湿された水分が掛ぶとんよりも外部に放散されることが遅いので、排湿は十分でない。日光乾燥1時間目までは急速に放散され、2時間ほどで平衡となるが、厚い敷ぶとんを中心部まで放湿させるには3時間ほどが必要である。 ○羊毛わたふとん 綿わたふとんよりは通気性もよく薄いものが多いので1〜2時間ほどでよい。 ○羽毛ふとん 通気性がよく、透湿性があるので1時間ほどでよい。羽毛の劣化を防止するためには、薄い布やカバー、シーツなどをかけるとよい。 ○合成繊維わたふとん 通気性・透湿性がよく、乾燥は早いので、1時間以内で目的は達せられる。 ○絹わたふとん 薄手のふとんが多いので、羊毛わたふとんよりも乾燥は早い。1〜2時間程度でよい。 |
96.ふとんの乾燥効果 ふとんを天日に当て、乾燥したふかふかのふとんに寝ることはこの上なく快いものである。乾燥には次のような効果があるので快適な眠りをとることができる。 ○ふとんに含まれている水分を発散させる 湿気の残ったふとんは繊維本体や繊維と繊維の間の空隙が少なく、密度が大きいので通気性が悪く透湿作用も低下している。湿度の高い寝床気候は安眠の妨げにとなるがこれを防ぐことができる。 ○保温性がよくなる 繊維および繊維間の空気層が増加するので、ふとんの中の空気容量である含気率が高まる。空気は繊維よりも熱伝導率が低いので、保温性はよくなる。 ○弾性の回復 含気率の回復は繊維のつぶれや巻縮を回復するので、ふとんわたの圧縮率および回復率がよくなり、ふかふかした快い感触が得られる。 ○殺菌防黴などの作用がある 日光と乾燥により、細菌、カビ、ダニなどの殺菌効果と減少および防止ができる。 |
97.ふとん乾燥機 雨の時や雪国の冬期など屋外で日光乾燥が出来ない時、日中留守でふとん干しのできない時などには便利で利用範囲も広い。 営業用としてのふとん乾燥機は一時に多量のふとんを処理することから、規模の大小によってさまざまの構造のものがある。また自動車による移動式などもある。家庭用として一般に使用されている機種の構造は、敷ぶとんと掛ぶとんの間に温風を送り込む布袋を挟み、これに発熱機からの温風を送りながら袋からふとんの中に温風を放散させて、ふとんを加熱・除湿させる構造のものが多い。ふとんわたの種類・量目・構造さらには寝室内の温度、湿度などによって差があるが、小型のものでは1〜3時間ほどの乾燥時間がかかる。加温されたふとんは、冷風装置によって冷されるが、自然に冷すには20〜30分ほどの時間がいる。また、ふとんと同時に毛布・寝衣類もできるし、乾燥による殺菌、除臭の効果もある。 冬期には就寝前に10〜20分ほど使用して寝床を温めたり、押し入れ内の除湿作業などにも利用される。暖房兼用のものなど種類も多いので、各々の家での使用目的に応じたものを選択することである。 |
98.ふとんの打ち直しと丸洗い ふとんは一定の期間使用すると就寝中の汗や体動による加圧と、もみ現象などで中わたが固くなる。これは掛ぶとんよりは敷ぶとんの方が影響が大きい。敷ぶとんに吸収された汗の多くは中わたのもつ吸湿、通気、排出作用と日常の日光や乾燥器などによる手入れで排除できるが、過剰な水分や汗を構成する水分以外の諸成分(発汗の項参照)は残留するので、これらの成分と就寝中の体圧や体動で、中わたがもまれてフェルト化(特に表面部分)して固くなると、中わたの含気率が低下して通気性が悪くなり、吸湿、排湿作用、保温性、弾性などが低下する。固くなった中わたは乾燥しただけでは回復が困難となるので、機械的に解きほぐすことが必要となる。この作業が中わたの打ち直しである。 打ち直しの頻度については地方の気候や寝室環境、中わたの種類・品種、使用している人の年齢・体型・性別、また使用方法、収納方法、日常の手入れ状況などさまざまな条件で差があって一律に何年ごとにという具合に決められないが、中わたが固くなって弾性が少なくなったら打ち直しをした方がよい。 綿わたの打ち直しでは、敷ぶとんでは2〜3年ごとに掛ぶとんでは4〜5年ごとが多い。しかし中わたの繊維が変色して弾性を失っていたり、打ち直してもすぐに固くなるようでは、すでにふとんわたとしての寿命を失っているので、ふとんとしての機能回復はできない。打ち直しの際には極力短繊維分や夾雑物を除去して歩減りを気にしないことであり、不足した分は同等かそれ以上の良質のわたを補足すると、長く持たせることができる。綿ふとんの丸洗いは綿繊維組成の脂肪やロウ分を失うので、弾性が低くなり固化が早まる。厚手の綿ふとんは中わたの打ち直しの方が効果的である。 羊毛わたは繊維が長くクリンプがあることと、吸湿性がよいので中わたがフェルト化し易い。これは敷ぶとんの場合特に早いので、日常の乾燥手入れが大切である。フェルト化は表面だけの場合が多いことと、羊毛の持つ弾性で綿わたよりは固くならない。丸洗いは羊毛繊維組成中の脂肪やロウ分を失うので弾性はやや低下するが、薄手のふとんでは汗成分などは除去できる。 合繊わたは掛ぶとんが多いことと繊維の吸湿性が少ないので、他の動物性繊維や植物性繊維よりは打ち直し回数は少なくて済むし、丸洗いで失う繊維成分がないので、そのまま丸洗いでよい。 羽毛ふとんの場合は打ち直しとは呼ばないが、中材の羽毛を取り出して洗浄・乾燥・選別をして損傷した羽毛や不純物を除き、不足分は同等もしくはそれ以上の品質の羽毛を補充して仕上げるのが従来からの方法である。羽毛の選別・補充を必要としない場合は丸洗いでもよい。 |
99.寝具の汚染 よごれは季節、生活環境、使用法、繊維の種類、品質、汚染防止加工の有無などさまざまな条件の違いもあって、汚染の程度も種類も多い。寝具類には身体からの垢、汗、しみ、その他のさまざまな汚れ物質の付着があり、更にこれらの汚染物質を栄養源として繁殖しているダニ、細菌、真菌、カビなどがある。身体や快適な寝床気候はこれら微生物(多くは非病原性)にとっては格好のよい生息環境となっている。特別な周囲の環境汚染がない限り、身体に近いほど汚染度合は大きい。汚染の程度が進むとこれらの微生物が汚れを分解して悪臭を出すようになる。夏の靴下などがよい例である。直接には無害であっても、衛生的とはいわれない。直接身につける寝巻き、パジャマ、ネグリジェなどや、シーツ、カバー類など身近にあって使用するものほど、汚れ度合いは多い。繊維素材としては毛、絹、綿などのように吸湿性の高い繊維ほど汚れの吸着が多く、合成繊維類は少ない。 繊維組織ではメリヤス、タオル、ネルなどのように厚地で、編み、織り目の粗いほど汚れが多く、ブロード地などのように薄地の組織は少ない。合成のニット製品はほぼこれらの中間である。また汚れの多いほど、微生物の着床も多くなる。 多くは非病原性であるが、稀には病原性のものもあるので清潔第一が肝要である。 |
100.寝衣類の洗濯では細菌はどれだけ除かれるか 寝具をいつも清潔にして使用することは健康と快眠のために大切なことである。特に寝巻き、パジャマなどの寝衣類やシーツ、カバーなど身近にあるものほど汚れが多い。洗濯はこれらの汚れと、汚れを栄養としている微生物類を除去し、殺菌することである。洗剤やセッケンには殺菌作用は少ないが、洗濯による除菌効果が大きく、更にアイロン(170〜180℃)もあって殺菌がなされる。洗剤でも殺菌力の強い陽イオン活性剤や漂白剤酸溶等は直接殺菌作用があるし、乾燥は細菌の阻止力をもっている。特に日光による乾燥では紫外線による強力な殺菌作用がある。多くの細菌は紫外線下では数秒〜数分で死滅する。カビ類は一般に強く、10分〜20分かかるものもある。またある種の黒カビでは40分も死なないものもある。 |