(1) 吸湿性と透湿性
私たちは睡眠中でも不感蒸泄の形で絶えず皮膚から水分を蒸発させている。この水分は個人差はあるが、およそ1時間に20・〜40・くらいで、1晩で160〜320・ほどの水分を出している。この水分はふとんが吸収し次いで空中に放散することが望まれる。これには寝床中に体から蒸発された水分を繊維自体が吸収する吸湿性と、繊維と繊維の間を通って水分の低い外部に放散させる透湿性とがある。寝具にはこの吸湿、排湿及び透湿機能が果たせるような材料の選択と仕様が必要である。 |
(2) 保温
私たちは体温を37℃内外に保つことによって健全な生命現象を保つことができる。この恒体温を維持するのは食物として取った含水炭素、蛋白質、脂肪などが体内で酸化する過程で作られる産熱によるものである。この産熱量は呼吸によって消費された酸素の量と呼出された二酸化炭素の量を測ることよって計出される。
更にこの熱は血液やリンパ液が体内各処に送り体を暖めてから外部に放出される。水分の蒸発によって体の表面から放散される熱は、汗1gにつき0.58Calである。これは湿性放熱又は蒸発放熱と呼ばれるものである。これらの放熱は発汗量が多いほど大きいが、放熱は皮膚血管を収縮あるいは拡張することによって調節され、体温はこの産熱量と放熱量のバランスによって保たれている。 |
(3) 寝床気候
寝具は人体表面の放熱を調節することによって、外部とは異なった気候条件をつくっている。この時には最も快適な寝床気候であることが望ましい。これまで多くの研究者によって快適寝床気候は温度はおよそ32±1℃で湿度50±10%くらいがよいとされこれより上でも下でも快適性は損なわれる。これらの温度、湿度の快適な条件を保持するためには、空間、音、明暗、色彩、震動などの寝室環境と共に食事、体調、寝具の条件などが良好であることが肝要である。寝具の保温は繊維自体、繊維間の空間、ふとん、毛布、タオル製品、カバ―類などの使用時の各層の間の空気、水分量、更にはこれらの移動性など、さまざまな条件によって変化する。保温には、適当な空気の量があり、且つこれが移動しないことなどが必要である。 |