●よい枕
就寝中の姿勢に無理がなく、ごく自然な形になるように頭けい部を適度な硬さと弾性で支えるのが枕である。しかしただ機械的に支えるだけではなく、頭けい部及び周辺から出される水分や熱を吸収してこれを外部に排出すると共に、枕を構成する素材の通気性や吸排湿性・吸排熱性によって頭けい部及び周辺の温度及び湿度を調整する重要な機能を果たすものでなければならない。
また、昔から云われている“頭寒足熱”についても学者の研究によってその重要さが証明されている。睡眠中の枕のよい高さは使用する人の体形、寝ぐせ、敷きふとんの弾性などで差がある。また、睡眠中の寝返りによる高さの変化に対しても対応できるよう、枕の長さ、巾、高さ等の寸法や構造が適切であり、中材や側布についても吸排湿、吸排熱、通気の機能を持ち、側布は丈夫で、色、柄、デザインは睡眠環境に適応するものでなければならない。特に枕の高さは敷ふとんやマットレスの硬軟、弾性とも関連するので、いろいろな条件を考え合せてつくられ、使用されるべきである。だいじな頭をあずける枕であるから、枕ぐらいと言わずに大切に考えたい。

よい枕とは
○自然で無理のない寝姿となるよう、頭けい部を支えられる大きさと形であること。
○頭けい部とその周辺の温度、湿度を調整して睡眠環境をよくする材料や構造であること。
○敷きふとんの弾性に対応した、よい高さであること。
○色、柄、デザインなどが睡眠環境によいこと。
○丈夫で経済的であること。
 などがあげられる。

(1) 自然で無理のない寝姿となるよう、頭けい部を支えられる大きさと形であること
枕の大きさは長さが肩幅、幅は首部から頭頂までの長さがあればよいが、現在の市販の枕はいずれも長さ40┰、幅20┰以上あるので大きさについては心配はない。しかし、これよりやや大きくとった方が少々寝相の悪い方でも安心できる。目安としては長さは肩幅+10┰以上、幅は第7頚椎骨から頭頂まで+5┰ほどあれば更によい。眠る時くらいは気がねなくのびのびと寝たいものである。
枕のよい高さは体形、寝ぐせ、習慣、敷きふとんの硬軟、弾性などの影響で個人差があるので、現在使用中の枕の内で一番具合のよい枕の使用時の高さを参考にするとよい。
市販されている枕には使用後の枕の高さの低下することを見込んでやや高めに作られていることが多いので、購入する時はちょうどかやや低めのものを選んで、自分に合うよう布など入れて、高さを調節した方が使いやすい枕となる。形については、特殊なものでない限り問題はないが、動物や花の形の枕でも、枕として極端に不自然なものは避けるべきである。
髷があったので丈の高いまくらが使われていた江戸時代でも「寿命三寸、楽四寸」(守貞漫稿)として、長寿のためには三寸(約9cm)の低い枕のほうがよいとしているが、現代では寝床環境や体形の違いもあって、9cmでは高い方に入る。
(2) 頭けい部及びその周辺の温度、湿度を調整して睡眠環境をよくするものであること
頭けい部に熱や湿度がこもることはよくない。一般的には皮膚温よりも5〜8℃くらい低い方がよいとされている。これには側布や詰め物の種類や性能が関係するので特に気をつけたいところである。
側材については吸湿性、排湿性、通気性のある素材がよく、この点から綿、麻、レーヨンは適品と言える。枕カバー、ピローケースなどについても同じである。
中材となる詰物は、吸湿、排湿性と共に吸熱排熱性のよいものであり、かつ、通気性のよいものがよい。
昔から使用されているソバがらはその点大変理想的である。しかし最近の製粉技術の違いから、ソバがらが3枚がらなっているので詰め物とした場合には通気性に優れてよいものの、不正形な実や未熟な実、また僅かながらソバ粉の混入もあって、虫害の原因ともなっている。
明治時代以前のように石うすで丁寧にひき、殻も全部一枚にばらばらになり、ひき残しやソバ粉の残留が全くないようなものは理想的であるが、最近は実や残留するソバ粉による虫害もあって、使用も減少している。もちろん、これらの欠点を除く加工がされたソバがらが理想的であることは間違いないが、ソバがら枕は価格が安いというこれまでのイメージがあって、詰め物として再生するための加工賃をかけることをさまたげている傾向もあって生産は多くない。一枚がらのソバがらは一部の寝具専門店では販売されている。
径1cmほどの竹の細いものを長さ1〜2cmに切って詰め物とした、竹パイプ枕もある。吸湿性がよくなるように油抜きの加工がしてあるので、素材としての吸湿、排湿性もあり、加えていずれも中空なので通気性もよく、一見凹凸が気になるが、思いのほか、頭への当たりも、使い心地もよい。丸洗いも可能で衛生的であるが、価格は他の枕と比べて2〜4倍と高いのが難点とも言える。竹の種類も限られているので生産も多くはない。
プラスチックパイプは値段も安く通気性があり一般的とも言える。ただし、パイプの素材自体には竹と違って吸湿性はないが、中材の汚染は少なく、丸洗いも可能で衛生的とも言える。柔らかい羽毛よりは硬くて、長く粗い羽根の方が通気性もよく弾性も羽毛よりは低いので枕に適している。
その他パンヤ、もみがら、小豆、茶葉などが使われている。種類による特性には相違もあるが、いずれも枕の詰め物に適している材料である。
(3) 敷きふとんの弾性に対応した、よい高さであること
敷きふとんやマットレスなどのように下に敷かれるものが柔らか過ぎると体重のかかるしりの部分と胸部が沈んで体型がW型になる。つまり頭と足の部分が高く、しりと背の部分が低くなる。このような時には敷の方を直さなければならないが、それまでは枕を低くして調節する。硬わたの敷きふとんや硬質のマットがよいとされるのはこのためでもある。敷かれるものの硬柔に応じて枕の高さが調整できる構造が望ましい。
(4)色、柄、デザイン等が睡眠環境によいこと
あまりけばけばしい色や柄は寝室の落ちつきを失うし、濃色は汚れも分かりにくい。寝室の落ちついた静かな雰囲気を誘うような色柄であり、清潔感のあるものを選ぶべきである。市販のものはこの点も考慮に入れて作られているので、多くの商品については心配はない。
(5) 丈夫で経済的であること
枕の側布は詰め物が入っていて簡単に取り換えや洗濯ができないので、丈夫で詰め物のソバがらなどが細かになって布目からでないよう、織り目の密なものがよい。枕カバーやピローケースは汚れがはげしいので、どんどん洗濯できる材質であることが必要であり、素材の吸排湿も必要なので側布の素材としては綿が最適である。特殊なものでない限り値段も高くないので使いやすい。

白崎繊維工業株式会社
〒003-0028 札幌市白石区平和通3丁目南1番4号 TEL:011-861-4146 FAX:011-862-8640

Copyright(C)shirasaki.Co.,Ltd.All rigths reserved.