1) 詰め物枕
昔から現在も一番多く使用されている詰め物をした枕には坊主枕(丸枕、くくり枕)平枕(洋枕)、角枕、長枕、馬蹄形枕、扇形枕、ドーナツ枕、子供用の動物を型どった枕など種類が多い。昭和の中頃までは坊主枕が主流であったが現在では平枕が多い。他の形の詰め物枕は多くはない。
坊主枕は筒形の側布(材)の中に詰め物を入れて閉じたものであり、古代から使われていた形である。
平枕は側布(材)を長方形に縫ってこれに詰め物を入れたもので中央部がふくれるので断面は紡錘形となる。
平枕でも側面にマチ布(材)を入れて高さを平均にしたものもある。
角枕は坊主枕の側布の四すみを縫い合わせて角を作り角形とする。昔は芯木を入れて角形としたものもある。
長枕は二人寝用の枕で坊主枕、平枕がある。馬蹄形枕は幼児用に多い。扇状枕は寝返りの姿勢に合わせたもの。ドーナツ枕は中国では子供の耳の形がよくなるようにと古くから使用されていた。子供用の動物枕のほかに花や魚の形のものなどがある。その他、寝返りにあわせて高さが調節できるよう中央部を低くした坊主枕、二つ折や三つ折にしたもの、詰め物入の小袋を組合わせたもの、中材の増減しやすい構造のもの、丸巻きにして高さを調節できるものなど種類は多い。
写真1 丸枕(坊主枕) 昭和初期
長さ35.0cm 幅17.0cm 高さ11.0cm |
写真2 平枕(洋枕)パンヤ入り 現代
長さ55.0cm 幅37.0cm 高さ14.0cm |
写真3 二つ折りの枕 現代
長さ52.0cm 幅36.0cm 高さ11.0cm |
写真4 マチの入った平枕 現代
長さ55.0cm 幅35.0cm 高さ5.0〜10.0cm |
|
2) 箱枕
昔はいろいろな箱枕が工夫され使われていたが、現在では秋田杉の箱枕や岩手県など桐材の多い地方での半丸形の枕など、地方の特産品として一部で作られている程度である。
角形(四角形)、多角形(六角形など)、安土形(矢場の標的を置く安土に似ているのでこの名がある)、半丸形などがある。底面が平らな平底形、丸みがあって左右にゆれる船底形などがあり、角形には底板のついたもの、物入れの引出しのついたものなど江戸〜明治時代にはさまざまな形のものあった。
江戸時代には髷があったので男女とも使ったが、明治4年(1871年)の断髪令以降は男は坊主枕となったので日本髪の女子が使う程度となった。上部の頚の当るところにくくり小枕を付けたものが多い。
写真5 角形 平底型 江戸 横引出し 写真6 安土形 平底型 江戸〜明治
長さ21.0cm 幅 7.2cm 高さ17.5cm 長さ28.5cm 幅11.0cm 高さ19.0cm
写真7 半丸形 昭和 写真8 安土形 船底型 江戸〜明治
長さ28.0cm 幅16.0cm 高さ 7.5cm 長さ21.0cm 幅 9.5cm 高さ18.0cm |
3) 組み木枕
木や竹などを組み木にして作られた枕で、木と木、木と竹、木と藤、木と皮、木と陶器など組み合わせはさまざまである。これも昔はよく使われた形式ではあるが、くくり小枕をつけたものが多い。現在は地方の特産品として作られている程度である。
写真9 キリ材製 現代 写真10 ヒバ材製 豆形 現代
長さ23.0cm 幅 9.0cm 高さ 8.0cm 長さ21.5cm 幅10.0cm 高さ10.2cm
(中央部)
写真11 ケヤキ材製 鼓形 江戸 写真12 木と竹 現代
径 12.0cm 高さ 11.8cm 長さ31.0cm 幅12.7cm 高さ 8.0cm
写真13 木と竹 大正 写真14 蒔絵入 江戸
長さ26.0cm 幅11.5cm 高さ12.0cm 長さ23.5cm 幅17.5cm 高さ18.0cm |
4) 網目枕
籐製品の枕が多く、昔から夏用の枕として愛用する人も多い。現在では輸入品が多い。丸形、角形、半丸形、楕円形など長短さまざまな形がある。他に竹、木、陶器、金属製や複数の材料を組合わせた網目枕もあるが数は少ない。
写真15 丸形 籐製 現代 写真16 半丸形 籐製 明治
長さ23.0cm 幅13.0cm 高さ14.0cm 長さ24.0cm 幅13.0cm 高さ14.0cm
写真17 平形 籐製 現代 写真18 角形 籐製 昭和
長さ34.5cm 幅15.4cm 高さ 6.0cm 長さ21.5cm 幅15.0cm 高さ10.0cm
写真19 籐と木 大正 写真20 金属・ビニール製 昭和
長さ25.5cm 幅11.0cm 高さ12.0cm 長さ29.8cm 幅11.2cm 高さ12.5cm |
5) 木枕
古くから使われた材料であり、形も多い。丸形、半丸形、臼形、鼓形、角形、撥形(三味線の撥の形をした枕)、安土形、豆形、長形などがあったが、現在では地方の特産材料を使った特産品として作られている程度である。青森県のヒバ枕、岩手県の桐枕などがある。
外国ではさまざまな木枕を見ることができるし、形もいろいろなものがある。
写真21 丸形 写真22 半丸形 通気の穴がある 昭和
長さ20.0cm 幅11.0cm 高さ5.5cm 長さ24.0cm 幅10.0cm 高さ7.5cm
写真23 角形 江戸 写真24 安土形
長さ15.3cm 幅12.5cm 高さ12.5cm 長さ19.6cm 幅10.0cm 高さ10.0cm
写真25 撥形 江戸 写真26 鼓形 年代不詳
長さ18.7cm 幅11.7cm 高さ20.0cm 径11.7cm 高さ11.7cm |
6) 陶枕
陶器の枕にも形の種類は多い。角形、丸形、豆形、半丸形、船形、人や動 物、植物を形としたものなどがある。夏用として現在も使われている。
写真27 角形 昭和初期 写真28 豆形 昭和初期
長さ14.2cm 幅6.3cm 高さ12.9cm 長さ20.0cm 幅10.2cm 高さ7.4cm
(中央部)
写真29 童子形 現代 写真30 動物形 年代不詳(中国)
長さ28.5cm 幅13.5cm 高さ9.4cm 長さ34.7cm 幅14.0cm 高さ15.0cm
(中央部) (中央部) |
7) 趣味の枕
風俗や個人の趣味によって作られた枕には自然の木、石、竹の形の変 わったものを利用したり、造形美を考えて作ったものなどの趣味の枕が あるが一般的に使われているものではない。
写真31 亀の木枕 昭和 写真32 自然木(エチオピア)
長さ35.7cm 幅11.2cm 高さ8.4cm 長さ23.4cm 幅14.2cm 高さ16.1cm
(中央部) |